データセンターにおける電源の種類:AC配電とDC配電とは?
データセンターの設計において、配電アーキテクチャは間違いなく重要な最も検討事項の1つです。電力効率を向上させ、運用コストを削減するためにデータセンターでは、交流(AC)または直流(DC)をめぐって議論が行われています。この記事では、データセンターにおける電源の種類(AC配電とDC配電)、それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。
データセンターにおける電源の種類
一般家庭では、主に100Vの電圧が使われるのが普通ですが、データセンターでは、100Vだけでなく、200Vの電圧の使用も可能となります。100Vの電圧対応機器はスイッチなどの日本製小型ネットワーク機器である一方、200Vの電圧対応機器は海外製ネットワーク機器が多いです。そのため、データセンターを利用する場合には、汎用性、電源効率などを考慮した上で、200Vの電圧の利用で電源設備を構築するケースが一般的です。
電源に交流(AC)と直流(DC)という2種類がありますが、200Vから100Vへの変圧等が容易にできる交流(AC)配電がよく利用されています。関連記事:「電源コードの種類・規格について:国内規格と海外規格の選定」
AC配電とは
交流(AC)配電は、発電所から供給される標準的な電気形式です。日本では、1秒間に60Hz / 115V(西日本)または50Hz / 230V(東日本)との2種類の交流電気が国を二分する形で使われています
データセンターにおける交流(AC)配電では、電力は600V ACまたは480V ACで施設に配電されます。その後、この電力は変圧器を経由してAC208VまたはAC120Vに降圧され、サーバーやその他のIT機器が使用するラックに配電されます。
停電や障害時の電力バックアップとして、UPS(関連記事)やバッテリーなどの蓄電システムが使用されています。上図のように、AC配電のステップとしては、まず、入力された交流(AC)電力は、直流電力に変換して蓄電して、パワーバックアップにおける蓄えた直流電力とともに、交流電力に変換します。最後にその電力はPDUに送られ、ラックに設置されたサーバーやIT機器に送られます。
AC配電システム
以下の画像には2種類のAC配電方式を示しています。
上図のように、電力はUPSからPDUを経由してIT機器に供給されます。このシステムでは、電源損失はUPS、一次配線、PDU、分岐回路の配線、IT機器電源で発生します。
上図のように、電力は変圧器を使用せず、IT機器に供給されます。そのため、このシステムでは、PDUで発生する損失はありません。
AC配電のメリット・デメリット
説明 | |
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メリット |
◉主流の電力を供給する形態として標準化された電源 ◉電圧は容易に変換されるため、数キロメートルという長距離の輸送が容易 ◉高電圧で電力を送ると電力損失が大幅に少なくなる ◉圧器で簡単に変圧できるため、インフラとしての電力供給に向いている ◉交流は電圧がゼロになるタイミングが周期的のため、電力供給中の停止が容易 |
デメリット |
◉交流(AC)から直流(DC)に変換するたびに、電力損失と発熱が発生 ◉目標電圧より高い電圧が必要 ◉コイルやコンデンサーの影響を受けやすい ◉交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換して蓄電し、蓄電した直流電力を再び交流電力に変換する必要があるため、データセンターでは複数の変換が必要となり、効率の低下とコストアップにつながる |
DC配電とは
直流(DC)配電は、太陽電池やバッテリーなどの電源から供給される電気形式で屋内のデータセンター用通信機器やサーバなどへの電力の供給を直流によって行うことです。停電や障害時には、充電されたバッテリーが電源バックアップとして使われます。AC配電の場合と異なり、DC配電は変換は必要ありません。
データセンターでは、パワーグリッドから中電圧の交流電力は、整流器を経由して直流に変換されます。整流器からの直流電力は電池の配分の遮断器湾(BBCBB)に送られ、ラックに設置されたサーバーに直接電力を伝送します。
DC配電システム
以下の画像には 3種類のDC配電方式を示しています。
●図1は通信機器用のDC配電システムを示しています。このシステムでは、DC電源が48Vの電力をDC対応のIT機器に供給します。
● 図2は仮説的な高電圧配電アプローチを示しています。このシステムでは、DC電源が500Vの電力をIT機器に供給するため、 高電圧のDC電力に対応しているIT機器が必要です。
● 図3は仮説的なハイブリッドDCシステムを示しています。このシステムでは、高電圧の500Vの電力を降圧型変換器を使用して、48Vの電力をDC対応のIT機器に供給します。
DC配電のメリット・デメリット
説明 | |
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メリット |
◉大幅な省エネ:エネルギー効率が高い ◉運用コストやインフラコスト、物理的なスペース、設置やメンテナンスに要する時間などを大幅に削減◉DC電源の配電システムはそれほど複雑ではないため、使用するコンポーネントも大幅に少なく、スペースも少なくなる ◉直流(DC)電源の品質は交流(AC)電源よりも優れる ◉太陽光発電、燃料電池、風力発電など、再生可能エネルギーの導入も容易 |
デメリット |
◉直流(DC)配電システムは、電気電圧や電気コネクタの規格に合意がなされていない ◉直流空調や防火設備など、直流電源で動作するインフラが市場に出回っている数は限られている |
DC配電:未来のトレンド
以上のことから、AC配電システムを使用しているデータセンターにおいては、交流(AC)から直流(DC)へ電力を変換して、再び元に戻されるたびに、継続的な変換・変圧処理による大きな電力損失が失われています。そのため、損失を避けるため、業界はデータセンター内の配電を直流(DC)に移行しようと思っています。
ただし、最大の課題は直流(DC)への移行は小規模なデータセンターに限られ、顧客密度の高い大規模なデータセンターでは効率的に拡張することができません。また、AC-DC変換の配置場所、UPSと同等の性能を発揮するDCバス上の蓄電デバイスの設計など、様々な課題が残されています。
現在、全世界で直流(DC)配電システム導入したデータセンターは、業界のごく一部に過ぎませんが、直流電源の導入は依然として説得力があります。より多くのデータセンターのデータセンター保有企業、運営企業、請負業者が直流電源に大きな投資を行えば、直流規格や直流サーバー、ネットワークスイッチなどの直流機器の開発を促進し、直流(DC)配電システムを次のレベルへ引き上げることができます。
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