データセンターの移行とは?手順・チャレンジ・注意事項を紹介(2)
前回はデータセンターの移行の意味・メリット・方式を説明しました。今回はデータセンターの移行における手順・チャレンジ・注意事項を詳しく紹介します。
データセンター移行を成功させる7つ手順
データセンターの移行は、複雑で大規模なプロセスです。ここでは、移行の各段階で行うべきことを説明します。
要件と計画
企業は、サイトロケーション、ネットワークアーキテクチャ、サイジング予測、情報要求(RFI)、コミュニケーションプランなどを事前に計画する必要があります。
インフラ評価
企業は、新しいデータセンターのネットワークアーキテクチャと関連インフラを見直す必要があります。ケーブル配線とケーブル管理も重要であり、リンク設計を行う際にはコストマトリックスを決定する必要があります。
設計と推定
企業は、低レベルのアプリケーションと高レベルのアプリケーションのどちらを先に移行するかを考慮しながら、データセンターの移行戦略策定を行います。移行プロセスで発生する可能性のある問題を事前に推定し、計画する必要があります。
データおよびアプリケーションの移行計画
アプリケーションは、移行前にリファクタリングが必要な場合があります。ITチームは、リファクタリング後のアプリケーションが期待通りに動作することを保証するために、詳細なテスト計画を作成する必要があります。
ハードウェアの移行計画
コロケーションやスイッチなどを含むデータセンターの移行には、サーバー、ストレージ、ネットワークインフラなど、多くのハードウェアの移動が必要となります。特にサーバーは、静電気やその他の環境条件に敏感であるため、輸送時には特に注意が必要です。
ターゲットデータセンターの検証
提案されたインフラの稼動前評価を行うことで、移行後の機能を確実に向上させることができます。データセンターの移転コストやその後の経常的な費用に影響を与える可能性、インフラの追加ニーズやその他の必要なサービスを考慮に入れておくことが重要です。
テストと検証
移行後のアプリケーショとシステムが正常に機能しているかの確認をするため、メンテナンスウィンドウ中のすべての高可用性コンポーネントとフライオーバーなどを含めるテストを行う必要となります。作業負荷の種類に応じて、チームは機能テスト、パフォーマンステスト、その他の種類のテストを実施することができます。
データセンターの移行の5つチャレンジ
計画外ダウンタイム
計画外のダウンタイムは、企業のデータセンター移行における共通の問題であり、顧客の利用状況に影響を与え、ビジネス損失を増大させる可能性があります。計画外のダウンタイムによるアプリケーションの停止は、データセンターの運用に多くの問題を生じさせます。
そのため、計画外のダウンタイムを避けるために、企業はアプリケーションとデータを段階的に移行し、常にロールバック(データ更新などで障害が起こったときに、その前の状態にまで戻ること)の計画を立て、専用ツールを使用するなどの対策をとる必要があります。
データの損失
データ移行は、移行プロセスの中で非常に重要な部分です。データ移行によりダウンタイムや互換性、パフォーマンスの問題が発生すると、企業の業務に影響を与える可能性があります。移行する前に、すべてのデータ、特に移行するファイルがバックアップされていることを確認することが非常に重要です。
ネットワーク遅延
遅延は、データセンター移行の課題として最も過小評価されているものの1つです。サーバーは一括して移行されることが多いため、ローカル接続を共有するアプリケーションは、通信を維持する必要があります。さらに、遅延は顧客体験にとっても重要です。潜在的なネットワーク遅延の問題を軽減し、どのアプリケーションがいつ一緒に動作するかを決定するために、ITチームはデータセンターの移行スケジュールを計画し、可能な限りシンプルに分離する必要があります。もちろん、トラフィックのセグメント化、マルチクラウド接続の確立、エッジでのインターネットのオフロードなども、不要な遅延を回避するための有効なソリューションです。
コスト消費
データ移行の過程では、移行コストを最適化し、ベストプラクティスを見出すことが必要です。どのようなリソースが使われているかを評価し、何がどのように最適化できるかを分析し、ITコストへの支出を監視し、新しいサービスを調査してコストを削減し、インフラの使用を最適化する必要があります。
セキュリティの構築
データやアプリケーションを新しいデータセンターに移行する際には、コンプライアンス違反、契約違反、安全でないAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)、ベンダー側の問題、設定されたサーバー、マルウェア、外部からの攻撃、予期せぬエラー、内部からの脅威など、多くのセキュリティ問題を考慮する必要があります。
そのため、移行がそのミッションクリティカルなアプリケーションに与えるかもしれないインパクトを検討する必要があります。
注意事項
データセンター移行は、移行プロセスにおける課題だけでなく、回避すべきデータセンター移行のリスクも存在します。
サービスの可用性
データセンターの主な目的は、ビジネス用のアプリケーションとデータストレージを提供することです。データセンターの移行は、まず基盤となるサービスの可用性を考慮する必要があります。これらのサービスには、データベースなどのインフラストラクチャー・アプリケーション、ネットワーク・デバイス、エンドユーザー・アプリケーションなどが含まれます。
キャパシティプランニング(キャパプラ)
データセンターのキャパシティには、主にスペース、電力、冷却、耐荷重、ネットワークが含まれます。企業は、ITのニーズに基づいて、新しいデータセンターのキャパシティプランを設計する必要があります。
データ移行
アプリケーションデータを既存の環境から別のIT環境に移行することは、データセンターの移行プロジェクトで最も複雑な側面の1つです。バックアップは、テープベースとハードディスクベースのいずれかを選択することができます。企業によっては、2つのデータセンター間を専用回線で接続し、ハードウェアまたはソフトウェアベースの同期メカニズムを利用して、データ移行を行うこともあります。
結論
企業の事業拡大に伴う負荷分散の有効な手段として、データセンターの移行は複雑な動きであり、企業の事業継続性を確保するための重要な要素になると考えられます。移行のプロセスでは、新しいデータセンターのインフラだけでなく、移行によってもたらされるビジネス上の問題も考慮する必要があります。そのため、企業は移行する前に包括的な計画を立て、データセンター移行のリスクを最小限に抑える必要があります。
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