ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)とは?
仕組み、活用事例、今後のトレンドについて
技術の進化に伴い、工学、医療、金融、宇宙開発などの先端分野での普及により、より少ない資源でより多くの性能を発揮できる高効率で信頼性の高い大量のデータの複雑な計算を実行するハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)への要求が高まっています。
ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)とは
ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)とは、高性能コンピューティング/高性能計算とも呼ばれ、大規模で高性能な計算システムを用い、複数のコンピューターとストレージデバイスを統合し、膨大なデータに複雑な計算処理を高速に行うことを指します。
一般的なノードパソコンに搭載された3GHzのプロセッサーは、1秒間に30億回の計算を行うことができます。一方、ハイパフォーマンス・コンピューティング(下記はHPCと呼ぶ)は日常のコンピューティングのようなものですが、計算性能を向上させ、複雑な計算や高度なアプリケーションをスムーズに実行できるようにします。より強力なHPCまたスーパーコンピュータは1秒間に何兆回もの計算を行うことができます。
ハイパフォーマンス・コンピューティング・システムは、より高速で信頼性が高く、スケーラブルな計算速度に対する需要の高まりに応えるために開発されたものです。現代のHPCは、アルゴリズム、コンピュータアーキテクチャ、システムソフトウェア、特殊なプログラムやアプリケーション、先進的なセンサーなどをまとめています。これらのシステムは、速度、精度、信頼性が優先される高性能環境での用途を見出すことができます。
ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の仕組み
HPCシステムには3つの主要構成要素があります。
・コンピューティング
・ストレージ
・ネットワーク
コンピューティング・コンポーネントは、マザーボード、RAM、CPU、ハードディスクなど、計算や重要なソフトウェアの実行など、特定のタスクを完了するために必要なパーツで構成されています。
ストレージコンポーネントは、記録されたデータを保持し、必要なときにいつでも簡単にアクセスできるようにします。
ネットワーク・コンポーネントは、システムとユーザーが適切に接続され、リモート・コンピューターやインターネットなどの重要なリソースにアクセスできるようにします。
HPCアーキテクチャを構築するために、複数のコンピューティングサーバーがクラスタにネットワーク接続されます。アルゴリズムやソフトウェアプログラムはクラスター内のサーバー上で同時に実行されます。また、必要な情報を保存したりアクセスしたりするために、クラスターはデータストレージシステムにネットワーク接続されています。
最大限のパフォーマンスを発揮するために、各コンポーネントが他のコンポーネントとお互いに同じ速度を維持する必要があります。また、すべてのネットワークコンポーネントは、コンピューティングサーバーとデータストレージ間の高速データ転送をサポートする能力を備えている必要があります。
メリット
HPCの主な特徴的な機能は以下の通りです。
パワフル&高性能な検索機能:HPC には、ユーザーがファイル、アプリケーション、巨大データベース間を簡単に移動できる強力な検索機能があります。これにより、コンピュータとの定期的なインタラクションが非常に便利になります。
高度なディレクトリ参照: HPCは、ディレクトリのトラバースをすることができる高度なメカニズムを持っています。これにより、ユーザーは分散したホストからディレクトリリストをキャッシュすることができ、以前に訪れたディレクトリを高速に再表示することができます。
認証管理:システム認証とアクセスを容易にするために、HPCは信頼できる接続をキャッシュして再利用することを可能にします。つまり、認証情報はセッション中に保存され、次にシステムを使用するときに再利用することができます。
ドラッグ&ドロップによるファイル転送:これにより、特に巨大なデータセットを扱う場合に、ファイルの転送を高速化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。
ディレクトリの同期: HPC では、リモートまたはローカルのディレクトリを同期させることができ、(転送先の)古いファイルを転送元のファイル/フォルダ内の新しいファイルに置き換えることができます。
活用事例
オンプレミス、エッジ、クラウドに展開されたHPCソリューションは、さまざまな産業分野でさまざまな目的に利用されています。
創薬
医療/ライフサイエンスの分野では、使用できるデータのボリュームが多ければ多いほど、生命を救う機会が増やします。そのため、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の導入により、専門家がデータを正確に分析し、新薬の開発から最適な治療法までの取り組みや医療過誤の兆候探知や分子のパフォーマンス予測などを加速することが可能となります。
ディープラーニング
ディープラーニングは機械学習の手法の一つです。実用化されている例として有名なのは、自動車の自動運転です。(HPC)の導入によるディープラーニングの研究を促進し、さらに精度を高めることで、自動運転車の指導を向上させます。
金融サービス
金融サービス業界(FSI)は、サイバー攻撃や不正行為などの脅威、規制の複雑化やデータに基づく取引決定の迅速化など、様々な課題に直面しています。HPCは脅威の検出や正確な結果の迅速な獲得ために、ネットワークアクティビティーをはっきりチェックし、数十億ものデータポイントを分析・評価することができます。また、HPC はリアルタイムの株価動向を追跡し、取引を自動化するために使用されます。
今後のトレンド
市場調査レポート「ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) の世界市場 - 2025年までの予測:ソリューション・サービス」によりますと、HPCの市場規模は2020年の378億ドルから、2025年に495億ドル到達すると予想されていることが分かりました。
HPC市場の成長の背景には、COVID-19のHPCへの影響だけでなく、AI・IoT拡大に伴う爆発的増加のデータ量を高速かつ正確に処理するHPCソリューションの能力です。例えば、金融、医療、研究、地震探査、政府・防衛など様々な分野で複雑なアルゴリズムの処理と迅速かつ正確な結果を求めるニーズの高まりが、HPC市場の成長を牽引する主な要因と考えられます。
一方、高額な設備投資(CAPEX)とそれに伴う運営費(OPEX)はHPC市場の成長を抑制しています。
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