IPv4アドレスとIPv6アドレス、その違いをわかりやすく解説
IP(Internet Protocol、インターネットプロトコルとも呼ばれる、下記IPと呼ぶ)とはインターネット・プロトコル・スイート(IPS)の中で最も重要な通信プロトコルの一種であり、インターネットに接続されたパソコン、スイッチ、ルーターなどのデバイス同士がデータをやり取りするためにデータ通信の方法を定めた規約のことです。現在広く使用されている二つのIPがIPv4とIPv6であり、それぞれはIPの第4版と第6版に当たります。これから、IPv4とIPv6の定義、両者の違い及び区別の方法について詳しくご紹介します。
IPv4とは?
IPの第4版として、IPv4はコンピュータ間のデータ通信方法を定める規約を確立しました。インターネットに接続されたデバイスにIPアドレスが割り当てられるため、デバイスを識別することができます。デバイス(スイッチ、パソコンなど)はインターネットに接続するたびに、固有の番号いわゆるIPアドレスが割り当てられます。以下に例を示します。IPv4ではIPアドレスを32ビットのデータとして表現するため、IPv4のアドレス総数が2の32乗個になります。つまり43億までのIPアドレスを割り当てることが可能です。ところがインターネットに押し寄せた膨大なユーザー数により、従来のIPv4ではアドレスの数がいずれ足りなくなります。それを解決するために新しい接続方法であるIPv6が生み出されました。
IPv6とは?
IPアドレス不足を解消するために、1999年にIPの第6版であるIPv6の正式割り当ては開始されました。IPv6ではIPアドレスを128ビットのデータとして表現します。そのため、アドレス総数は2の128乗個になります。IPv6を導入することで、IPアドレス不足を解消したのみならず、複数のデバイスがインターネットに接続する際に起きた問題(接続制限による速度低下、遅延)も解決しました。IPv6アドレスの表記方法について、下記の図をご覧ください。
IPv4とIPv6、両者の違いとは
IPv4とIPv6、両者どもIPアドレスの割り当て及びデバイス識別において使用されている通信プロトコルですが。動作原理の概念が同じだとはいえ、パケットヘッダの構造は全く異なります。次に、両者の違いについてご説明します。
IPv4とIPv6の仕様
従来のIPv4より、IPv6はIPアドレスを32ビットから128ビットまで増やしました。それによって、IPv6アドレスの総数は無限とも言えます。たとえ地球上に1平方メートルつき 個IPv6アドレスを割り当てても、IPv6アドレスを使い切る可能性はゼロです。また、CIDR表記で表されるIPv6アドレスによって、インターネット上のルーターにおけるルーティングテーブルの肥大化速度を低減させ、IPアドレスの浪費を防ぎました。
IPヘッダのフォーマット
IPv6のヘッダはIPv4ヘッダに比べてかなりシンプルになっています。基本ヘッダ内のフィールドの数が大きく減少したことにより、IPv6パケットの伝送における中継ルーターの負荷が軽減されています。
シンプル化による負荷低減・通信高速化
IPv6には「基本ヘッダ」と「拡張ヘッダ」と呼ばれる部分があります。付加的な情報の多くが別個の「拡張ヘッダ」に再配置したことにより、IPアドレスのシンプル化・機能性の両立を実現しました。IPv4のヘッダにOptionフィールドが付随していることと違い、IPv6ヘッダが固定長であるため、ルータは処理を高速化することができます。IPv4ヘッダの最大40バイトのOptionフィールドに対し、IPv6の拡張ヘッダは数珠つなぎに続けられる構造であり、長さに制限がなくなりました。それが故に、IPv6ヘッダにあるOptionフィールドに書き込まれる付加的な情報により、各レイヤのセキュリティ強化、ジャンボグラム(拡張ヘッダ内のペイロードを持つパケット)、モバイルIPなどの機能を拡張することが実現されました。
ネットワークセキュリティ
IPSec(Internet Protocol Security、下記IPSec)とは、IPv4ですでに実用化されているパケットの認証や暗号化のための標準プロトコルである。IPv4の場合ではIPSecが利用可能でが必須ではありません。それに対して、IPv6の世界ではIPSecの実装が必須とされています。IPv6の拡張ヘッダとして、認証ヘッダと暗号化ヘッダを組み込むことで、ネットワークにおけるデータ通信のセキュリティと秘匿機能が強化されました。
応用分野
IPv6の実用からすでに何十年経ちましたが、IPv4の応用に及ばず、広く活用されていない原因は一体なんだろう。IPv4とIPv6の構造が違うため、IPv6を導入するには様々な課題を解決しなければなりません。特に、インターネット接続の仕組み、割り振られるアドレスの違いにより、両者間の互換性はないと言えます。IPv6への移行もしたがって困難極まります。グーグルの調査分析によると、2009年から2019年にかけてIPv6アドレスを通してグーグルにアクセスするユーザーの割合が下記の図表に示された通り、IPv6の普及は初期から早いとは言えません。未だにIPv6のユーザー数はIPv4に及ばないままです。
IPv6とIPv4の仕様
違い | IPv4 | IPv6 |
---|---|---|
IPアドレスの表記仕法 | ドット付き10進表記 | 128ビットを16進数に直して、「コロン(:)で区切って表現する。 |
アドレスの割り振りポリシー | 「ユニキャスト」「マルチキャスト」「ブロードキャスト」 | 「ユニキャスト」「エニイキャスト」「マルチキャスト」 |
IPアドレス範囲/サブネットマスク | ホストをIPアドレスで指定する。 | 指定しない。 |
ヘッダーフィールドの数 | 12 | 8 |
ヘッダーフィールドの長さ | 20 | 40 |
チェックサム | チェックサムフィールドがあります。 | チェックサムフィールドがありません。 |
クラス数 | クラスAからEまでです。 | 無制限の数のIPアドレスです。 |
構成 | IPアドレスとルートを割り当てる必要があります。 | 必要な機能に応じて、設定はオプション可能です。 |
VLSM | サポートします。 | サポートしません。 |
断片化 | ルートの送信と転送によって行われます。 | 送信者が行います。 |
ルーティング情報プロトコル | ルーティングデーモンでサポートされます。 | RIPはIPv6をサポートしない静的ルートを使用します。 |
ネットワーク設定 | 手動またはDHCPを使用します。 | 自動構成です。 |
SNMP | SNMPは、システム管理に使用されるプロトコルです。 | SNMPはIPv6をサポートしていません。 |
モビリティ & 相互運用性 | 移動が比較的制限されたネットワークトポロジは、移動性と相互運用性機能を制限します。 | IPv6は、ネットワークデバイスに組み込まれた相互運用性とモビリティ機能を提供します。 |
DNSレコード | ポインター(PTR)レコード、IN-ADDR.ARPA DNSドメイン | ポインター(PTR)レコード、IP6.ARPA DNSドメイン |
IPからMACへの解像度 | Broadcast ARP | マルチキャスト近隣要請 |
マッピング | ARP(アドレス解決プロトコル)を使用してMACアドレスにマップします。 | NDP(近隣探索プロトコル)を使用してMACアドレスにマップします。 |
サービスの品質(QoS) | QoSを使用すると、TCP/IPアプリケーションのパケット優先順位と帯域幅を要求できます。 | 現在、IBM iのQoS実装はIPv6をサポートしていません。 |