ハブ、スイッチとルーターの違いをわかりやすく解説
はじめに
イーサネットネットワークにおいて、ハブ、スイッチ、ルーターはそれぞれ異なる役割を担っています。ハブ機能、スイッチ機能、ルーター機能を統合したデバイスも存在しますが、これら3つのデバイスの機能は全く異なるものです。しかし、多くの方がこの違いを十分に理解していないため、それぞれの役割を区別できないことが少なくありません。そこで、次にこれらのデバイスの違いについて詳しく説明していきます。
ハブ、スイッチ、ルーターに関する解説
ハブ
ハブ(Hub)は、ネットワーク内で複数のデバイスを接続するための基本的なネットワーク機器です。主に小規模なLAN(ローカルエリアネットワーク)で使用されますが、最近ではスイッチの普及により、利用される機会が減少しています。
1、ハブの定義
イーサネットLAN(Local Area Network)に接続する集線装置として用いられるハブに複数の端子(ポート)が並んでいます。リピータハブは接続先の要求に対して、相手がどこにいるか知らないので接続された全ての機械にリクエストを送信します。OSI参照モデルの物理層に位置するハブは集線装置として、受け取った信号を他のすべてのデバイスに発信するという中継機能を持ちます。パケット通信を行う際に、データはコピーされて、一つの端子から他の端子まで伝送されます。それを通じて、LAN内にある全てデバイスはデータを共有することができました。いわば、ネットワーク内の結節点として機能しています。
2、ハブの機能
データブロードキャスト
ハブは受信したデータパケットを接続されたすべてのデバイスに送信します。どのデバイスがデータの受信対象であるかを区別せずにブロードキャストするため、ネットワークの全デバイスが同時にデータを受け取ります。
簡単なデバイス接続
ハブを使うことで、複数のデバイスを簡単に同じネットワークに接続することができます。これにより、小規模なネットワークの構築が容易になります。
帯域幅の共有
ハブでは、すべての接続デバイスが共有する単一の帯域幅を使用します。これにより、ネットワークトラフィックが増加すると、速度が低下する可能性があります。
コリジョンドメインの拡大
ハブはコリジョンドメイン(衝突ドメイン)を拡大する機器です。コリジョンドメインとは、ネットワーク内で同時に複数のデバイスがデータを送信しようとしたときにデータが衝突する領域を指します。ハブはこれを管理せず、すべてのデバイスが同じドメイン内で衝突する可能性が高くなります。
3、ハブを使用するシナリオ
小規模なネットワーク
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企業や家庭内での小規模なネットワーク構築の場合、特にネットワークトラフィックが多くない場合には、ハブを利用することができます。例えば、限られた数のデバイス(数台のコンピュータやプリンタ)を接続する際には、ハブはコスト効率の良い選択肢です。
レガシーシステムの維持
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古いネットワーク機器やインフラが存在する環境では、既存のハブを引き続き使用することがあります。新しい機器に置き換えるコストや労力を抑えたい場合、既存のハブを利用してネットワークを維持することが可能です。
簡単なテストやデモンストレーション
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ネットワークの構築や動作テストを行う際に、一時的にハブを使用することがあります。ハブは接続がシンプルであるため、ネットワークの基本的な構成や通信のデモンストレーションに適しています。
特定のレガシーデバイスとの互換性
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一部の古いデバイスやシステムでは、ハブを使用することで互換性を保つ必要がある場合があります。スイッチが利用できない環境や、レガシーデバイスがハブでしか接続できない場合に、ハブの使用が検討されます。
帯域幅の効率性が重要でない環境
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ネットワークトラフィックが非常に軽い場合や、ネットワークの帯域幅がそれほど重要でない場合には、ハブを使用することができます。例えば、単純なデータのやり取りやインターネット接続が目的の場合、ハブの性能でも十分なことがあります。
スイッチ(スイッチングハブ)
スイッチは、ネットワークデバイスの一種で、複数のデバイス(コンピュータ、プリンタ、サーバーなど)を接続し、それらの間でデータを効率的にやり取りする役割を果たします。スイッチは、特にイーサネットネットワークにおいて、データパケットの送信先を最適化し、ネットワークのパフォーマンスを向上させるために使用されます。
1、スイッチの定義
通常、スイッチはOSI参照モデルのデータリンク層(第二層/レイヤ2)で動作したり、時にOSI(オーブンシステム相互接続)リファレンスモデルのネットワーク層(第三層/レイヤ3)で動作したりするため、あらゆるプロトコルに対応しています。スイッチングハブはリクエストを受けると、リクエスト内容から送信先のMACアドレス(=ネットワーク機器が持っている固有のアドレス)で送信先を特定してリクエストを送信します。LAN構築に使われるスイッチはLANスイッチと呼ばれ、イーサネットの場合、イーサネットスイッチと呼ばれます。
2、スイッチの機能
データ転送の効率化
スイッチは、受信したデータフレームの宛先MACアドレスを確認し、適切なポートにのみフレームを転送します。これにより、ネットワーク内の不要なトラフィックが削減され、データ転送の効率が向上します。
コリジョンドメインの分割
スイッチは、各ポートに接続されたデバイスを個別のコリジョンドメイン(衝突領域)に分けることで、ネットワーク全体の衝突を減少させ、スムーズな通信を実現します。これにより、ネットワークのスループットが向上します。
フルデュプレックス通信のサポート
スイッチは、同時にデータの送受信が可能なフルデュプレックス通信をサポートします。これにより、ネットワークの効率とパフォーマンスがさらに向上します。
VLANのサポート
多くのスイッチは、仮想LAN(VLAN)をサポートしており、物理的には同じネットワークに接続されているデバイスを論理的に分割することができます。これにより、ネットワークのセキュリティが向上し、管理が容易になります。
ポートミラーリング
スイッチの一部のポートでは、ポートミラーリング機能をサポートしており、ネットワークトラフィックを監視するために特定のポートにデータをコピーすることができます。これにより、トラブルシューティングやネットワーク監視が容易になります。
QoS(Quality of Service)
スイッチは、QoS機能をサポートすることにより、重要なトラフィックに優先順位を設定し、ビデオ会議や音声通話などのリアルタイムアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。
3、スイッチを使用するシナリオ
家庭や小規模オフィスのネットワーク
家庭や小規模オフィスでは、複数のデバイス(PC、プリンタ、NASなど)をネットワークに接続するために、スイッチが使われます。このような環境では、アンマネージドスイッチがよく使われます。これにより、簡単にデバイス同士を接続し、インターネット接続を共有することが可能です。
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自宅でパソコン、スマートテレビ、NASなどのデバイスをインターネットに接続する。
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小規模オフィスで複数のパソコンやプリンタをネットワークに接続し、ファイル共有やプリントジョブの管理を行う。
中規模オフィスや企業のネットワーク
中規模オフィスや企業では、より多くのデバイスを接続し、VLANによるネットワークの分割やQoSによるトラフィックの優先順位設定が必要になることがあります。ここでは、マネージドスイッチが適しています。これにより、セキュリティの強化やネットワークパフォーマンスの最適化が可能です。
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企業内で部門ごとにネットワークを分割(VLAN)し、セキュリティを強化する。
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音声通話やビデオ会議などのリアルタイムアプリケーションのパフォーマンスをQoSで最適化。
データセンターや大規模ネットワーク
データセンターや大規模ネットワークでは、数百から数千のデバイスを接続し、信頼性の高いネットワーク管理が求められます。ここでは、シャーシ型スイッチやスタッカブルスイッチが使用され、スケーラビリティと高性能を提供します。これにより、複雑なネットワークトポロジーの構築や管理が可能になります。
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大規模データセンターでのサーバやストレージデバイスの接続。
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複数の拠点を持つ企業のネットワークインフラの構築と管理。
教育機関や公共施設
教育機関や公共施設では、多数のコンピュータやデバイスがネットワークに接続され、複雑なトラフィック管理やアクセス制御が必要です。マネージドスイッチを使用することで、ネットワークセグメンテーションやトラフィックの最適化が行えます。
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学校のコンピュータ教室でのネットワーク接続管理。
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図書館の公共Wi-Fiネットワークの管理とセキュリティ強化。
ビデオ監視システム
ビデオ監視システムでは、カメラの電源供給とデータ転送を一元化するために、PoE(Power over Ethernet)スイッチが使用されます。これにより、電源ケーブルを別途用意する必要がなくなり、設置が簡便になります。
商業施設やオフィスビルの監視カメラシステムにおける、ネットワークと電源の一元管理。
ルーター
1、ルーターの定義
ルーターはデータを2つ以上の異なるネットワーク間に中継する通信機器です。OSI参照モデルのネットワーク層(レイヤ3)ルーターはネットワーク間のやり取りを中継し、宛先のIPアドレスをもとにデータ転送を行います。例えば、2つの異なるLAN(Local Area Network)間、WAN(Wide Area Network)間、あるいはLANとISP(Internet Seveice Provider)の間です。通常、ルーターはゲートウェイに位置し、複数の規格の異なるネットワークを中継します。
パケットヘッダーとルーティングテーブルに基づいて、ルーターはネットワーク上のルーティングに関する決定(最適な経路を通じてパケットを転送する)を行います。また、ルーターにおいて、ICMP(Internet Control Message Protocol、インターネット制御通知プロトコル)のようなプロトコルが用いられ、機器間の通信や通知に関する情報の通知などのために使用されます。そのプロトコルを通じて、ホスト間の通信中継を行うルーターはネットワークを経由し、パケットを伝送します。
2、ルーターの機能
パケット転送
ルーターは、ネットワーク間でデータパケットを転送します。データの宛先アドレスに基づいて最適な経路を選択し、パケットを目的のネットワークに送信します。
ネットワーク接続
異なるネットワーク(例えば、家庭内ネットワークとインターネット)を接続し、相互に通信できるようにします。これにより、異なるネットワーク間でのデータのやり取りが可能になります。
IPアドレスの割り当て
ルーターは、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を使用してネットワーク内のデバイスにIPアドレスを自動的に割り当てます。これにより、各デバイスが一意のIPアドレスを持ち、ネットワーク通信がスムーズに行えます。
ネットワークアドレス変換(NAT)
NAT機能を使用して、内部ネットワークのプライベートIPアドレスを外部ネットワークで使用されるパブリックIPアドレスに変換します。これにより、複数の内部デバイスが単一のパブリックIPアドレスを共有してインターネットにアクセスできます。
ファイアウォール機能
ルーターは、ネットワークのセキュリティを強化するためにファイアウォール機能を提供します。これにより、外部からの不正アクセスや攻撃を防ぎ、ネットワーク内のデータを保護します。
トラフィックの管理と最適化
ルーターは、トラフィックの負荷を管理し、ネットワークの効率を最大化するために、トラフィックの優先順位付けや帯域幅の制御を行います。
VPN接続
ルーターは、VPN(Virtual Private Network)機能をサポートし、リモートユーザーや拠点間で安全な通信を確立します。
ルーティングプロトコルの使用
ルーターは、OSPF(Open Shortest Path First)やBGP(Border Gateway Protocol)などのルーティングプロトコルを使用して、最適な経路を決定し、ネットワーク内のパケット転送を効率化します。
3、ルーターを使用するシナリオ
家庭内ネットワーク
-
家庭内でインターネット接続を共有するために、ルーターを使用します。家庭内の複数のデバイス(コンピュータ、スマートフォン、タブレットなど)に対してインターネット接続を提供し、内部ネットワークを構築します。
オフィスネットワーク
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企業やオフィスで、複数のデバイスや部門間でネットワークを管理するためにルーターを使用します。ルーターは、社内ネットワークをインターネットに接続し、内部のデータ通信やファイル共有をサポートします。
VPN接続
-
リモートオフィスや在宅勤務者が企業の内部ネットワークにアクセスするために、ルーターを使用してVPN(仮想プライベートネットワーク)接続を確立します。これにより、安全なリモートアクセスが可能になります。
ネットワークの分割
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大規模な企業ネットワークやデータセンターで、異なるネットワークセグメント(例えば、内部ネットワークと外部ネットワーク)を分割するためにルーターを使用します。これにより、ネットワークの管理とセキュリティが向上します。
ネットワークアドレス変換(NAT)
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内部ネットワークのプライベートIPアドレスを、外部ネットワーク(インターネット)で使用するパブリックIPアドレスに変換するためにルーターを使用します。これにより、複数の内部デバイスが単一のパブリックIPアドレスを共有してインターネットにアクセスできます。
トラフィック管理と最適化
-
ネットワークトラフィックの管理や帯域幅の制御を行い、ネットワークパフォーマンスを最適化するためにルーターを使用します。例えば、ビデオ会議や重要な業務アプリケーションのためにトラフィックを優先させることができます。
ファイアウォール機能の利用
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外部からの不正アクセスや攻撃を防ぐために、ルーターのファイアウォール機能を使用します。これにより、ネットワークのセキュリティを強化します。
異なるネットワーク間の接続
-
異なる種類のネットワーク(例:LANとWAN)を接続するためにルーターを使用します。これにより、企業や組織のネットワーク全体を統合し、効率的に通信できます。
ハブ、スイッチ、ルーターの機能比較
ネットワークでデータはフレームと呼ばれる単位に分割され、回線上を行き来します。ネットワークの関連デバイスはフレームを受信した後、フレーム・サイズを拡大し、パソコンのポートを経由してユーザーの端末まで伝送します。
◉ ハブは集線装置としてフレームを複数のポートに送信します。しかし、ハブからフレームの受信先は必ず決まっているわけではなく、一つあるいは複数のポートにフレームを伝送するかもしれません。さらに、10/100Mbpsハブ上にある全てのポート(ハブに接続しているデバイス)は同じ帯域幅を共有しなければなりません。
◉ それに対して、スイッチは本体に繋がっていた全てのデバイスのMACアドレス(ネットワークインタフェースを識別するために使用されるアドレス)記録するため、フレームを受信した際に、そのフレームの発信先及び送信先を簡単に把握し、ネットワークの応答時間を短縮することができます。また、ハブとは違い、10/100Mbpsスイッチの場合、全てのポートは帯域幅を共有する必要がなく、10/100Mbpsの通信速度をそのまま利用することができます。
◉ ルーターはネットワークでパケット通信を行い、パケットを目的地(受診先、相手先の端末)などまで届けます。パケットな中にデータ情報だけでなく、宛先のIPアドレスも含まれています。また、ユーザーはルーターを通じてIPアドレスを複数のデバイスに割り当て、インターネットを共有することができます。三者(ハブ、スイッチ、ルーター)の中に、それができるのはルーターのみです。 ちなみに、OSI参照モデルの異なる階層に位置するスイッチに対して、レイヤ2(L2)スイッチやレイヤ3(L3)スイッチといった略称もあります。 その違いについては関連記事をご覧ください。
ハブ、スイッチ、ルーターの違いの比較表
ハブ、スイッチ、ルーターの違いを比較するための表を以下に示します。これにより、それぞれのデバイスの機能や用途の違いが一目で分かります。
テンプレート | ハブ | スイッチ | ルーター |
---|---|---|---|
レイヤー | 物理層 | データリング層 | ネットワーク層 |
機能 | 集線装置として、複数の端末を一つのネットワーク内にまとめて受送信を行う。 | 複数のデバイスへの接続可能、ポートとの通信やりとり、VLANセキュリティ設定などの機能を備える。 | ネットワークでパケットを直接的に伝送する。 |
データ送信方式 | 電気信号またはデジタル信号 | フレーム & パケット | パケット |
ポート数 | 4/12ポート | マルチポート、通常は4~48個 | 2/4/5/8ポート |
通信方法 | フラッディング、ユニキャスト、マルチキャスト、またはブロードキャスト | 最初のブロードキャスト、次にユニキャストあるいはマルチキャスト。状況に応じて通信方法が変わる。 | 初期からブロードキャスト、次はユニキャストやマルチキャストに変わる。 |
デバイスタイプ | ノンインテリジェントデバイス | インテリジェントデバイス | インテリジェントデバイス |
ネットワーク構築方法による分類 | LAN | LAN | LAN, MAN, WAN |
通信モード | 半二重通信 | 半二重通信・全二重通信 | 全二重通信 |
通信速度 | 10Mbps | 10/100Mbps, 1Gbps | 1-100Mbps(ワイヤレス); 100Mbps-1Gbps(有線) |
データ通信のためのIPアドレス | MACアドレス | MACアドレス | IPアドレス |
使用例 | 小規模ネットワークや家庭ネットワーク | 企業ネットワークやキャンパスネットワーク | インターネット接続、異なるネットワークの接続 |
まとめ
最適なネットワークデバイスの選択は、予算、ネットワークの規模、接続のニーズなど、複数の要因によって決まります。ハブはコストが低く、小規模でトラフィックが少ないネットワークに最適ですが、全ポートが帯域幅を共有するため、パフォーマンスに制限があります。スイッチは、大規模ネットワークにおいて速度とセキュリティを向上させますが、コストが高めです。ルーターは高価ですが、トラフィックが多く複雑なネットワーク環境に対応し、最先端の機能を提供します。
結論として、ハブ、スイッチ、ルーターのそれぞれには独自の長所と短所があります。適切なデバイスを選択するためには、自身のニーズに合わせて予算、ネットワークの規模、接続の要件を考慮することが重要です。適切なデバイスを使用することで、ネットワークパフォーマンスの最適化、セキュリティの強化、スムーズなデータ通信を実現できます。
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