業界を苦しめる半導体チップ不足:原因・展望・解決策を探る
新型コロナウイルスによるいくつかの国内で製造業の工場や事業所が操業停止に陥るリスクが高まっている結果、生産量の減少やサプライチェーンの変更に影響を及ぼしています。ハイテク業界では、原材料の不足が新製品の開発と新市場の創造の障害になったことがわかりました。
ロックダウン(都市封鎖)期間中、一部重要な労働者は自宅待機(外出自粛)命令に従う場合、チップ製造は数カ月間が不可能となりました。封鎖が解除される場合、「新しい日常」が定着した社会の構築に向けて民生用・業務用電子機器への需要の高まりは、サプライチェーンに波及するのに十分です。
チップ不足の現状がもたらす課題
急速に進化するテクノロジーが業界および社会変革を起こすにつれて、半導体チップはスイッチ、無線ルーター、コンピュータ、自動車、家庭用電化製品などの製造に欠かせないものとなっています。
このチップ不足が業界に及ぼす影響を理解し、定量化するためには、最も影響を受けるいくつかの分野を見てみる必要があります。ここでは、過去18ヶ月間の状況を簡単に説明します。
自動車産業
北米や欧州では、コンピューター・チップの不足や寒波により、生産が減速または停止してしまいました。テスラ、フォード、BMW、ゼネラルモーターズといった大手自動車メーカーが軒並み影響を受けています。大きな影響としては、世界の自動車産業が2021年末までに、製造した自動車が以前の計画より400万台減少し、平均1100億ドルの収益を失うということが分かります。
コンシューマーエレクトロニクス(消費者用電子機器)
コロナ禍で増加する在宅勤務と遠隔学習により、デスクトップパソコンやスマホなどの家電製品へのニーズは増えています。大規模なパンデミック発生の初期、自動車メーカー数社はオープンな半導体チップの注文を放棄する前に、自動車の生産予測を大幅に削減しましたが、半導体チップの供給は需要に追いつかず、家電業界は半導体チップの大半を買い占めました。
データセンター
サムスン電子、グローバルファウンドリーズ、TSMCなど、ほとんどのチップ製造会社は、パンデミック時にPCやデータセンター顧客からの利益率の高い注文を優先しました。このため、データセンターは競争力を持つことができましたが、データセンターが世界的なチップ不足の影響を受けていないとは言い切れません。
データセンターが調達に苦労している部品の中には、データセンターのスイッチングシステムを構成するために、BMCチップ、コンデンサー、抵抗器、回路基板などの必要な部品もあります。もうひとつの課題はウェハーや基板の不足によるリードタイムの延長と組み立て能力の低下です。
LEDバックライト
多くの液晶ディスプレイに搭載されているLEDバックライトは、入手困難な半導体チップを使用しています。原材料の不足と市場需要の増加により、LED照明機能を搭載したガジェットは価格が高騰しています。この状況は2022年初めまで続くと予想されます。
再生可能エネルギー:太陽電池とタービン
再生可能エネルギーシステム、特に太陽光発電やタービンの動作には、半導体やセンサーが必要です。世界サプライチェーンの混乱悪化は業界に打撃を与え、Enphase Energyのようなエネルギーソリューションメーカーがシェア低下を余儀なくされているほどです。
半導体の今後の展望
世界的なチップ不足に対応するため、部品メーカー数社が生産量を増やし、チップ不足の解消に努めています。しかし、電子機器や半導体のトップメーカーは、この状況は好転するどころか悪化の一途をたどると述べています。これらの業界リーダーの多くは、半導体不足が2023年まで続く可能性があると予測しています。
現在進行中のグローバルサプライチェーンの危機と不安定さを踏まえ、最近のCNBCの記事とBloombergのインタビューでは、さまざまなアナリストが意見を述べ、来年は厳しい年になると確信している人が多いようです。以下はその主な内容です。
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インテル社のパット・ゲルシンガーCEOは2021年4月、チップ不足は2、3年後に回復すると指摘しました。
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DigiTimes Reportによりますと、インテルとAMDのサーバーICとデータセンターのリードタイムが45~66週間に延びていることが分かりました。
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世界第3位のEMS・OEMプロバイダーであるフレックス社は、世界的な半導体不足は2023年まで続くと予測しています。
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2021年5月、半導体受託生産4位のグローバルファウンドリーズは、AMDと16億ドル、3年間のシリコン供給契約を結び、6月末にはシンガポールに40億ドル、300mmウェーハの新施設を立ち上げました。しかし、同社によると、生産能力は部品生産が最も早い2023年にしか増加しないとしている。
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業界をリードするピュアプレイファウンドリの1つであるTMSCは、2023年まで部品生産量を増加させることはないとしています。しかし、楽観的なのは、2021年末までに車載用マイクロコントローラの製造を60%増強します。
上記の各調査・分析による効果的な業界洞察から、主要プレイヤーが世界的なチップ不足に多数の力を入れましたが、おそらく2022年を通してボトルネックが続くであろうことが分かります。さらに、アマゾン、マイクソフト、グーグルなどの大手ハイテク企業がクラウドやデータセンター事業用に独自のチップを設計するという傾向は、チップ不足の危機や半導体業内が直面するその他の問題などを悪化させる可能性があると考えている業界関係者がいます。
最近のBloomberg Businessweekの記事では、ソフトウェア、アマゾン、グーグルのチップ設計市場への進出は業界の転換点となることを示しています。インテルのようなほとんどのチップデザイナーが持っているリソースが限られたのに対して、それらのハイテク大手企業は優れたコスト効率の良いチップを独自に開発するためのリソースを持っているのです。それらのハイテク大手企業が独立するため、長い待ち時間に耐え、それぞれは部品の備蓄を作り、在庫更新の合間に生産ニーズを満たようとします。したがって、既存のチップ不足問題をさらに悪化されることとなります。
解決策
有利な状態を継続するために、チップデザイナー、製造者また影響を受ける多くの業界関係者はいくつかの手段を採用し、チップ不足の影響を軽減します。
多くのチップメーカーにとって、生産能力の増強はチップ不足に対する明快な答えです。また、特定の地域のサプライヤーは市場の変動や政治的な圧力によりよく対応するために、備蓄や輸出の制限を決定しました。
同様に、歩留まりの向上やシリコンウェーハから製造されるチップの数の増加は、チップ供給量をある程度増やすために、多くのメーカーが投資してきた分野です。
以下は各社が採用せざるを得なかったその他の解決策です。
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柔軟性の確保:最先端ではないものの、ないよりはましという従来のチップ技術に対応できます。
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ソフトウェアソリューションの活用:スマートな圧縮とコンパイるなどを活用し、効率的なAIモデルを構築し、ハードウェア能力を引き出します。
結論
今回の世界的なチップ不足は半導体のサプライチェーンに深刻な衝撃を与え、自動車、消費者用電子機器、データセンター、LEDバックライト、再生可能エネルギーなどの様々な産業に影響を与えています。
現在の緩和策の積み上げにも関わらず、2023年までチップ不足が続けていくと、業界のオピニオンリーダーたちはそう考えています。また、完全な回復はすぐに見込めないものの、一部のチップメーカーは自動車界の顧客のニーズを抑えるため、生産量を増やすと楽観視しています。
そうは言っても、規模や市場ポジションに関係なく、すべての業界関係者が影響を受ける問題であることを考えると、有利な状態を継続するのは至難の業です。生産能力の拡大、旧来のチップ技術への対応、ハードウェアの能力を引き出すソフトウェアソリューションの活用などが、有望な解決策となります。
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