OSPFとBGP:AS内外の経路制御を解説
異なるルーティングのアルゴリズムにより、IGPにおいて三つの計算手法が活用されている。それぞれは、ホップ数(通信経路上に存在する転送・中継設備の数)重視のディスタンスベクター(OSPF)、コスト値重視のリンクステート(RIP)、そして距離と方向の複合値を重視するアイブリット(EIGRP)である。
目次
OSPFとは
OSPF(Open Shortest Path First)とは、ディスタンスベクター型ルーティングプロトコルの代表であり、通信経路のコスト値で最適ルートを決めるという経路制御の方式である。関連記事:「OSPFの動作について」
SPF(コスト値)アルゴリズムによる経路制御
SPFとは、Shortest Path Firstの略で、宛先までのコスト合計値を計算した上で最適ルート(コストの合計値が最も低いルート)を決めるアルゴリズムである。
コスト値の算出は上記の公式に示す通り、10Mbpsのコスト値が10、1Gbps(1000Mbps)のコスト値が1と見なす。ルーターAのコスト合計値が4、ルートBのコスト合計値が11。ルートAを最適ルートだと見なす。
また、すべてのリンクが1Gbpsの場合、各ルートのコスト合計値は宛先によって異なる。ルーターAのコスト合計値が4、ルートBのコスト合計値が2。ルートBを最適ルートだと見なす。
OSPFエリアとは
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OSPFエリアとは、同じトポロジマップ(LSDB)を持つルーターのグループであり、ネットワークの細分化による通信の効率化を実現した。
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LSAとは、Link State Advertisementの略で、OSFPルーターの持つ自分に関する情報(ルーターID、リンク数、コストなどのインターフェース情報)が含まれている。
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LSDB(Link State Database)とは、LSAを収納するトポロジテーブルであり、ネットワーク全体の構造いわゆるトロポジマップを反映するデータベースである。
上記の図に示す通り、エリアA内のすべてのルーターが同じLSDB(エリアA)を共有する、エリアB内のすべてのルーターが同じLSDB(エリアB)を共有する。
OSPFエリアの内部と外部
ネットワークの細分化、いわゆるネットワークを複数のエリアに分割し、共通のポリシーやIGPで「内と外」を意味づけた。
関連性の低い情報なら概要だけ掴み、関連性の高い情報を詳しく把握する。そいう基準に則って、エリア内のルーターは所在エリアの詳細なネットワーク構成を記録し、エリアの外に流出させない。一方、エリア外のネットワーク構成の詳細を知る必要がなくなることは、大規模ネットワーク内のLSAやり取りの削減・帯域幅の節約に繋がる。
さらに、エリア内のネットワーク構成が変わる場合、各ルートのSPF値もそれなりに変わる。エリア内のすべてのルーターに知らせが届き、共有されたLSDBは更新される。それに対して、エリア外のネットワーク構成に変更がないため、SPF値の再計算を行わずに済む。
BGPとは
IGPに所属するOSPFとは違い、BGP(Border Gateway Protocol)とはEGPの一種として、AS間の情報通信を管理するルーティングプロトコルである。異なるAS間の経路制御を行い、最適なルートを選出する際に使われる。
パス属性アルゴリズムによる経路制御
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ASとは、Autonomous Systemの略で、共通ポリシーを持つルーターやネットワークの集合体を意味する。そのASを区別・識別するために、各ルーターにユニークなAS番号が割り当てられた。
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ASパス(AS_PATH)とは、そのパス(経路)上すべてのAS番号を記したリストである。
BGPはまさにASパに基づいて最適ルートを決めるルーティングプロトコルである。最も短いASパス(AS数が最も少ない)を最適ルートだと見なして、経路の優先順位を決めるというのはBGPの仕組みである。
BGPの仕組みとループ回避
BGPはTCPセッション179番による接続を使用して、経路情報の交換(OPENメッセージ)を行う。その経路情報の中に、自身のAS番号、ルーターID、BGPバージョン、自分の保有している経路情報などが含まれる。
また、経路ループを回避するために、受信したASパスに自分のAS番号が含まれている場合、ルーターはその経路情報の受信を拒否する。
OSPFとBGP、両者の違いをまとめると
項目 | OSPF | BGP |
---|---|---|
正式名称 | Open Shortest Path First | Border Gateway Protocol |
ルーティングプロトコル | IGP(AS内プロトコル) | EGP(AS間プロトコル) |
アルゴリズム | SPFツリー(コスト値重視) | ASパス(AS数重視) |
実装の難易度 | より簡単 | 複雑 |
管理範囲 | 中・小規模ネットワーク | 大規模ネットワーク |
計算に必要なCPU負荷 | 高い | 高い |